« 書評「ストーリー漫画でわかる ビジネスツールとしての知的財産」 | トップページ | 月刊誌「知財ぷりずむ」にて連載をはじめました »

2018年9月10日 (月)

書評「こうして知財は炎上する-ビジネスに役立つ13の基礎知識」

こうして知財は炎上する-ビジネスに役立つ13の基礎知識」(稲穂健市先生)を読了。読者として知財初心者向けを対象としているようだが専門家からみても非常に面白くてためになった。なにより、いろいろ社会を騒がせた個別具体的な事例をふんだんに紹介しているのが良かった。
 
最近の事例だと、「そだねー」商標出願問題とかJASRAC対音楽教室の受講料問題とか、ホットな知財の話題は漏れなく紹介されていて、その説明も分かりやすかったので最近の知財ニュースを深く理解するには最適だと思う。そして、紹介する事例もバラエティに富んでいて著者の見識の広さはすごいと思った。
 
全体の構成として、
・権利者側の貪欲すぎる姿勢が招くトラブル
・模倣する側の問題によるトラブル
・知財に対する認識のズレにより生ずるトラブル
・知財制度の抜け道により生ずるトラブル
の4つに類型化して具体的な事例を紹介しているが、最初の類型についての考察が特に良かったね。
 
五輪のアンブッシュマーケティングとか、JASRACの好戦的な姿勢とか、なかなか論じにくいところがあると思う。特に利害関係が絡むとね。そこを著者は見事なバランス感覚で公平に論じているのが素晴らしいと思ったね。もし仮に権利者側に肩入れし過ぎるとこの本自体が炎上しかねないところだったと思う。
 
あと、著者のフットワークの軽さと当事者への丁寧な取材の姿勢も良かったと思う。コメダ珈琲の競合店に足を運んで写真を撮ったりと、この本に著者撮影の写真がふんだんにあったのは親近感があった。また、双方の当事者に話を聞いてコメントを取っているのも素晴らしい姿勢だと思う。
 
知財を利用した節税スキームの話とかも具体的なやり方とか知らなかったので勉強になった。この本を読んで痛感したのは、「法的に正しくても大義があるかどうか」が大事になってくることかと思う。大義がなかったら法的に正しくても世間で叩かれる可能性がある現在はなかなか厄介な時代だと思う。
 
あとは知財の世界でも「忖度」が幅を利かせているのは読んでいて参考になった。期限の切れた権利や商習慣など「知財もどき」に対しても注意を払わないといけないというのは、好ましいことではないが皆の知財リテラシーが低いとそうなってしまう。
 
知財の本ってどうしても法律が絡むのでなかなかとっつきにくいものが多いが、この本は最初に述べたように個別具体的な事例が盛りだくさんなので全く知財を知らない人にもお勧めかと。そして、この本を読むと世界の知財のニュース(特にトラブル関係)をより面白く深く感じることができると思う。
 
↓弁理士ブログランキングに参加しています。よろしければ1クリックお願いします。
 

にほんブログ村 士業ブログ 弁理士へ
にほんブログ村

« 書評「ストーリー漫画でわかる ビジネスツールとしての知的財産」 | トップページ | 月刊誌「知財ぷりずむ」にて連載をはじめました »

書評」カテゴリの記事